第217回国会 衆議院 環境委員会 第4号 令和7年3月25日
これより会議を開きます。
内閣提出、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官大濱健志さん、環境省自然環境局長植田明浩さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○近藤委員長
御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○近藤委員長
これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。深澤陽一さん。
○深澤委員
おはようございます。自由民主党の深澤陽一です。
まず、いわゆる鳥獣法改正案について質問させていただきます。この質疑に御指名いただきました石原筆頭を始め、理事の皆さんには心から感謝を申し上げます。
まず、今回の法改正のきっかけの一つといたしまして、北海道猟友会砂川支部の支部長の方が、市の要請を受けて駆除活動に出動したにもかかわらず、住宅の方向に発砲したとして猟銃所持の許可取消しとなり、それを受けて、ハンターが安全かつ円滑に駆除活動ができるよう、体制を求められたことがあったのだというふうに思います。
猟銃取消しを受けて、報道で拝見した中では、同猟友会は一時、市町村からの出動要請は受けないことを表明されたと。その後、一律に拒否しないという対応になったという報道も拝見をいたしました。
猟友会の皆様の協力は最も重要なことですが、この法案が通過した場合、この北海道猟友会を始め、全国の猟友会の皆様には市町村の要請に安心して応じていただけるのか、まず大臣の方から御説明いただきたいと思います。
○浅尾国務大臣
御質問ありがとうございます。
熊等が人の日常生活圏に出没した場合の対応に当たっては、地域の関係者の方々の御協力が不可欠でありまして、その中でも、御指摘のとおり、実際に緊急銃猟を委託されることが想定される猟友会の皆様に安心して対応していただくことができる環境整備が重要と考えております。
このため、具体的な制度の検討に当たっては、大量出没時の対応を経験した秋田県猟友会に法改正に向けた検討会に参加いただいたほか、猟友会の方々の御意見を踏まえて検討を行ってまいりました。
改正法案に基づく銃猟は、市町村長が主としてハンターに委託して実施することとしておりますけれども、銃猟を行うことの決定やそのための安全確保措置など、緊急銃猟の実施の責任は市町村長にあり、委託を受けたハンターが責任を負うものではございません。
また、改正法案に加え、都道府県を通じた市町村への財政支援や運用ガイドラインの策定、周知などにも取り組み、猟友会を始めとする地域の関係者が安全かつ円滑に対応できるよう、政府全体で丁寧に対応してまいりたい、このように考えております。
○深澤委員
ありがとうございます。
猟友会の皆様の協力、また全ての関係者の協力が不可欠だということで、このことについて、引き続き、何かありましたら丁寧に、また分かりやすく情報が行くようにということで、是非環境省の方には御配慮をいただきたいと思います。
もう一点、猟友会の協力という点で、もう一つ質問をさせていただきたいと思います。
私の地元の話で恐縮なんですけれども、電力会社と、あと交番からの要請で猟友会の方が駆除に出られたということなんですが、人家が百メートルほどのところにありまして、昨今、警察の猟友会に対する対応が大変厳しいということで、要請のあった警察官ではなく、さらにその上司にも許可を取ってほしいということで求めて、上司の許可を取って駆除を行ったにもかかわらず、後日何度も警察から呼出しをされて調書を取られたという案件、お話を伺っております。
確認なんですけれども、今回の法案が成立した場合、基本的には市の責任で駆除を行うことになっているんですけれども、罰則とか補償以外にも、取調べとかあるいは調書作成でハンターの方々の負担が非常に発生するというようなことがないのでしょうか。その点、確認をさせていただきたいと思います。
○大濱政府参考人
お答えいたします。
一般に、猟銃による発射行為を認知した場合には、事案によっては、警察におきまして、その適法性につきまして、ハンターの方々に対し事実確認を行うことはあるところでございます。
一方、改正後の鳥獣保護管理法の規定に基づき、猟銃の所持許可を受けたハンターが市町村長から委託を受け適正に緊急銃猟を行った場合には、銃刀法違反には問われず、警察が当該ハンターに対しまして取調べや調書の作成を行うことはないものと考えております。
いずれにいたしましても、改正法案の施行後も、警察が市町村やハンターの方々と連携して対応することは重要でございまして、引き続き緊密に連携してまいりたいと考えております。
○深澤委員
ありがとうございます。
現時点では適法性を確認するために事実確認などを行っているということなんですけれども、この法改正が実現したときには、調書の作成とかそういった手間は基本的には発生しないということだというふうに認識をいたしました。
実は、今回の法改正、法案について、ちょっと地元の猟友会の幹部の方にもお話を伺ってきました。基本的に、私、地元静岡なんですけれども、静岡は幸い熊などによる人身の被害などがほとんどないということで、これは幸いよかったんですけれども、日常生活圏に出てきた鳥獣、広く鳥獣というのはもう駆除するしかないので、法案を、とにかくこれは進めてくれという話をいただきました。
ただ、法案の話をしたら、それよりも、警察が厳し過ぎるんだよという話を逆に延々とされまして、ふだんもされるんですけれども。ふだんから猟友会の方と意見交換とかというのを警察はするんですけれども、これは人によるんですけれども、猟友会に対して常に取締りの姿勢で臨んでくるということで、もっとふだんから意思疎通のしやすい環境、警察の方にも雰囲気をつくってもらいたいというのを常々言われております。
なので、警察の立場というのもよく分かります、猟銃事件とか様々今までもあって、これを取り締まらなきゃいけない、きっちりやらなきゃいけない、これも分かるんですけれども、ただ、猟友会の役員の方、幹部の方と、現場、警察の方と、とにかくそこは壁をつくらないようにというような指導を是非いただいて、猟友会、これからは行政、基礎自治体も入りますけれども、警察の皆さんと円滑に、本当に進められるように体制の強化をしていただきたいというふうにお願いをさせていただきます。
続きまして、質問させていただきますが、今回の法案について、一部の団体から、日常生活に出没した熊等を危険鳥獣と定義することへの懸念が示されていると思います。
まず、お伺いしますが、緊急銃猟の対象となる鳥獣に対して危険鳥獣と名称を用いた理由についてお聞かせをいただきたいと思います。
○植田政府参考人
お答えいたします。
改正案では、国民の安全、安心を確保するため、人の日常生活圏における緊急銃猟制度を創設することとしておりますが、緊急銃猟の対象となる鳥獣は、現に人家周辺での人身被害が多数確認され、被害を受けた際には重傷化のリスクが高い鳥獣を想定していることから、危険鳥獣という名称を用いることとしております。
なお、改正案の第二条第六項においては、危険鳥獣を、人の日常生活圏に出没した場合に人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれが大きいものと定義しており、あくまで人の日常生活圏における緊急銃猟の対象となる鳥獣を指しております。
○深澤委員
分かりました。
基本的な考え方は分かりました。特に、今回の危険鳥獣というこの名称は、人家周辺で特に重傷化のリスクの高い、そういった、今回は熊あるいはイノシシというふうに指定しておりますけれども、重傷化リスクが高い場合というところに限定した形でということで理解をいたしました。
では、改めてお伺いしますが、危険鳥獣の名称が不適切という意見について、環境省としてはどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
○植田政府参考人
お答えいたします。
本法案において用いました危険鳥獣とは、あくまで、人の日常生活圏に出没した場合に危害を及ぼすおそれが大きい鳥獣、すなわち、今回の法案に盛り込んだ緊急銃猟の対象となる危険な鳥獣を指しているものであります。
その上で、危険鳥獣という名称をもって、奥山における熊の捕殺が強化されるというものでは全くありません。熊対策は、人と熊のすみ分けを図るという考えの下、奥山での生息地の保全や誘引物の管理、除去など、捕獲に偏らない総合的な対策を推進してきたところであります。今後も、そうした対策も含めて、関係省庁と連携して推進していきたいと考えております。
○深澤委員
分かりました。
それはそうですね、そういうことだと思うんですけれども、基本的には、奥山での捕殺が強化されることはない、あくまで日常生活圏に出てきたものに対してのことであるということなんですけれども。
あくまで、奥山での熊等に対してはそういった危険というイメージではないということだと思うんですけれども、熊というのは、木の実だとか山菜あるいは昆虫などを好んで食べるというふうに認識をしておりますけれども、基本的には雑食ということで、鹿肉とかあるいは魚なども食べるというふうなことなので、人の生活圏に出没することで、今後、熊が人を襲うケースが増えてくるのではないかといったことが連想されるのではないかなというふうに思います。
実際、環境省として、今、熊が人にとって、どういうときに危険なのか、どう危険なのか、あるいは危険じゃないのか、こういった御認識をお持ちでしたら、ちょっと御説明いただけたらと思います。
○植田政府参考人
お答えいたします。
熊は、一般的に警戒心が強く、人を避けると言われておりますけれども、突発的に人と出会うと防御的な攻撃を招き、危険な状態となります。
近年、熊による人身被害は増加傾向にありまして、令和五年度には熊による人身被害は二百十九人を数え、うち六名が亡くなっております。また、熊の生息地周辺では、出没に対する不安のため、通学や散歩などの日常生活にも支障が生じる場合があると聞いております。
このため、人の日常生活圏に出没する熊については、人にとって危険な存在であり、状況に応じて捕獲等をする必要があるものと考えております。
一方で、全ての熊が危険な状態にあるわけではないことから、本来の生息地である奥山の保全や誘引物の管理、除去など、人と熊とのすみ分けを図ることが重要と考えております。
○深澤委員
分かりました。
当たり前のことを聞いたんですけれども、本来の生息地、奥山にいる分には問題ないと。むしろ、そこの環境整備等々をしっかりとこれからも行っていただくことが重要かなと思います。
ただ、法案を作るに当たってそういう御答弁かもしれませんが、実際にはそれができていないから、熊が人里といいますか生活圏に現れてくる、また現れてくるリスクが出てきているのだと思います。
ですから、簡単に熊の本来の生息圏にと申しますが、今までできていなかったというところを踏まえると、環境省としては、相当頑張らないとここの実現というのはできないのではないかなと思いますので、そういったところもしっかりと危機感を持って、危機感というんですか、責任感を持って受け止めていただいて、作ったからには、法案を考えたからには、受け止めていただいて、しっかりと実現性のあるものにしていただきたいというふうに存じます。
それでは、続きまして、今回の改正案の危険鳥獣という表現に懸念を示している方々に対し配慮をするとすれば、この改正案によって、国民の皆様が必要以上に熊やイノシシが危険であるという認識を持たないようにする必要があるというふうに思います。
その点について、環境省として、仮にこの改正案が通過したとして、国民の皆様が必要以上に熊とかイノシシが危険であるという認識を持たないためにするためにはどのような方策があるのか、もしあれば、お聞かせいただきたいと思います。
○植田政府参考人
お答えいたします。
今回の法改正で可能となる緊急銃猟の考え方や銃猟の対象となる熊やイノシシの生態等について、法改正の施行までにガイドラインとしてしっかり取りまとめて、周知をしていく予定であります。
このガイドラインの中で危険鳥獣の考え方についても丁寧に記載するとともに、環境省のウェブサイトで発信するなどして、国民の皆さんが必要以上に熊やイノシシを恐れることのないよう、周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
○深澤委員
分かりました。
続きまして、この法案が施行された場合、実際にこの法案を適用して捕獲、あるいは研修会等に関わるのは、これは想像できると思いますけれども、猟友会あるいはハンターの皆様であって、当然、一般の国民の皆様ではないということであります。この法案が通過した後も、例えば、今まで地元で、熊出没注意の看板が危険鳥獣出没注意みたいになることは、これは絶対ない話です。
これからも、この法案が通っても、熊出没注意は熊出没注意のままだと、イノシシもそうだと思います。
なので、つまり、危険鳥獣という表現に触れて任務を行うのは、実際は行政の方あるいはハンターなどの専門の方々だけではないかと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○植田政府参考人
お答えいたします。
委員御指摘のとおり、基本的には、危険鳥獣という表現は、法令用語として行政や専門機関等が使用する機会が多いことが想定をされます。
ただ、いずれにしましても、環境省としては、危険鳥獣との名称は、昨今の熊による人身被害の状況に鑑みると、人の日常生活圏において実施する緊急銃猟の場面において、銃猟の対象とせざるを得ない鳥獣の一面を的確に表しているものと考えております。
○深澤委員
この改正法案は、つまり、ハンターにとって安全かつ円滑に活動が行えることを目的としているのだろうと思います。
ですから、先ほど言ったように、例えば、今回、あえて使いますけれども、危険鳥獣というものが、日常生活のところに熊が出てきましたといったときに、行政の方から猟友会の方に、危険鳥獣の対応をお願いしますという言い方の使い方になると思います。ですから、こういう使い方が合理的なんだろうと感じております。そういう意味では、危険鳥獣という名称を使っていただくことが、無駄なく、はっきりしたやり取りになるんだろうと感じております。
先ほども申しましたように、国民の皆様の目に見える形で、危険鳥獣ということに世の中のものが置き換わるということは全くないんだろうというふうに思います。ですから、そういう意味では、今回、危険鳥獣という名称を使うことに懸念を示されているかもしれませんが、特に猟友会の皆さんに、間違った、あるいは誤認識をさせないためにも、この危険鳥獣という要請ですよね、要請用語みたいなものをしっかりと丁寧に説明して、御理解をいただくことを環境省としてはしっかりとやっていただきたいというふうに、私としては認識をしております。
もう一つ、最後に意見なんですけれども、今回、市町村長の責任の下で、緊急銃猟、駆除を行うということなんですけれども、緊急銃猟の条件というのがありますよね、条件が整えば、ハンターの要請ができるわけなんです。日常生活圏でも銃猟を使えるわけなんですけれども、これは市町村の責任でやるといっても、例えば、条件が全部、一〇〇%整いました、でも、ちょっとここは足りないんだけれども、現場の判断で、この角度で撃てば大丈夫ですよとハンターの方が言っても、いや、法的には満たしていませんみたいなところがきっとあるのだと思います。
ここはガイドラインなどで示されると思いますけれども、いずれにしても、この法案ができて、市町村の責任でやるときに、市町村が判断できないというようなことが決して起こらないように、ガイドラインでうまく丁寧に説明できるように、理解されるように、しっかりとしたものを作って、国民の安心、安全を守っていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。
○近藤委員長
次に、沼崎満子さん。
○沼崎委員
公明党の沼崎満子です。
本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
また、環境省におかれましては、鳥獣保護管理法第三十八条の改正に関する対応として、住居集合地域等での熊類の出没に対し、安全確認等の一定条件下で銃猟を可能とする改正案が提出されたことに対しましても感謝申し上げます。
今、令和五年度の熊の人身被害が最多を記録したということもございましたし、私自身も実は、熊被害に遭った方の診察をした医師の話を聞いたことがございます。やはりひどい被害だったというようなことも聞いておりますので、安全を確保するという意味で、今回の法案の改正は必要だったというふうには感じております。
そこで、以下の点についてお伺いします。
初めに、まず、人の生活圏内において銃を使用して熊等に安全に発砲するためには、安全の確認や周辺住民の避難など、発砲に必要な条件を確保することが重要と考えます。市町村長の許可の下、現場責任者が警察やハンターと連携して迅速に対応するためには、緊急銃猟の使用に関するマニュアルあるいはガイドラインなどの作成が必要と思います。
まず、マニュアルやガイドラインの作成に当たって、どのような専門家や関係者の意見を取り入れる予定でしょうか。また、その作るプロセスは、どのように作っていくかについてお伺いします。特に、現場で経験を持つハンターや専門家の意見というのが反映されることが重要だと思いますので、その点についてのお考えもお聞かせください。また、作成までのスケジュールも、お分かりでしたらお答えいただければと思います。お願いいたします。
○植田政府参考人
お答えいたします。
環境省では、法改正いただいた場合には、改正法の施行までに、市町村等が緊急銃猟を安全かつ円滑に実施できますように、ガイドラインの作成を予定をしております。
その作成に当たっては、鳥獣の捕獲等に関する有識者、実際に市街地出没対応に当たった経験のある都道府県、市町村の担当者やハンター等から丁寧に御意見を伺うとともに、警察を始めとする関係機関と内容の調整を行うこととしております。
また、スケジュールでありますが、緊急銃猟の施行は、法案において公布の日から六か月を超えない日としておりまして、環境省としては、今年の秋の熊の出没に対応できるよう、夏頃のガイドライン公表を目指して作業を進めてまいりたいと考えております。
○沼崎委員
スケジュールは秋に間に合うようにということでしたけれども、マニュアルができてから一応訓練等もしないと、なかなか実際に使うのは難しいと思いますので、そこも考慮してスケジュールを考えていただければと思います。
次に、緊急銃猟の使用に関するマニュアルには、どのような内容が盛り込まれる予定でしょうか。例えば、緊急事態の発生時における、先ほどの御質問の中にもありましたけれども、判断基準、市町村が判断をするときに困らないような判断基準や、あるいは実施者が遵守すべき安全対策、さらには捕獲の方法、具体的にどのような手順で捕獲していくか、そういったことも含まれるのか、お示しいただきたいと思います。
○浅尾国務大臣
お答えいたします。
市町村が暮らしの安全のために緊急銃猟を円滑に実施するためには、御指摘のとおり、その判断基準、安全対策、捕獲方法等を含め、緊急銃猟の実施に必要な対応を網羅的に整理したガイドラインをお示しすることが重要であると考えております。
このため、策定を検討しているガイドラインでは、緊急銃猟の基本的な考え方や実施の判断に関する事項、安全対策や捕獲の方法などを含めた、事前準備から捕獲後に至るまでの各段階における必要な対策、情報や留意事項などを盛り込むことを想定しており、御指摘の点もしっかりと踏まえた上で、内容の充実に努めてまいります。
法律の施行に合わせて市町村を始めとした各関係者が円滑に対応できるよう、準備を着実に進めてまいりたいと考えております。
○沼崎委員
本法案が効率的に運用されるためには、マニュアルやガイドラインの整備が大変重要だと思いますけれども、それに加えて、先ほどもお示ししましたように、関係者の連絡体制を整えて、また日頃からその準備のための訓練をしていくということも非常に大事だと思います。
また、そこに合わせた、先ほどはスケジュール感も要望したところでもありますけれども、特に警察を含めた現場住民の避難の経路、どのように避難させるか、あるいは通行制限をどのように対応していくか、そういったことは特に警察との連携が必要とも思いますので、関係者による訓練の実施に関してどのような方針かということをお尋ねいたします。
○植田政府参考人
お答えいたします。
緊急銃猟の実施に当たり、市町村、ハンター、警察などの関係者において速やかに必要な対応を行うためには、事前に方針を整理をして、訓練を実施しておくことが重要であります。
現在でも、人の日常生活圏に熊が出没した場合、現場では、警察官を含む地域の関係者が連携して対応しており、警察からも、引き続き住民の退避や誘導等について協力して対応する旨が表明されております。
環境省では、緊急銃猟の適切な運用方法を整理したガイドラインを市町村等にお示しをして、事前の訓練や体制整備の必要性について周知を図るとともに、訓練等の実施に係る経費についても、指定管理鳥獣対策事業交付金による支援を行ってまいりたいと考えております。
○沼崎委員
費用等の面も考慮いただいているということで、非常にそこもありがたいと思います。
先ほどもありましたけれども、猟友会と警察の関係というのも、こういった訓練を通じて密に連携していけば、よりいい関係性も築いていけると思いますので、被害が多いところにおいては是非この訓練等が円滑に実施できるような、そういった体制構築に関してもお願いしたいと思います。
次の質問に移ります。
人の生活圏における銃猟では、高い技術が必要になってくると想像されます。そこで、ハンターに求められる技術要件に関してお尋ねいたします。
技術要件に関する規定を何か定める方針でしょうか。また、作るとすると、どのような判定基準を考えていますか。想定されるハンターに対応できる人がどれだけ、今現状でそういう技術を持っているハンターがどれだけいるのか、そういったことも把握されているか、そこの点についてお尋ねいたします。
○植田政府参考人
お答えいたします。 緊急銃猟の委託を受けるハンター等の技能要件につきましては、政令で定めることとしております。
その内容につきましては、現場に詳しい有識者の御意見もお聞きしながら検討することとしておりますけれども、銃器の使用により生じ得る危険を予防して適切に行われるよう、例えば、使用する銃器の種類に応じた狩猟免許を受けた者であること、熊等の鳥獣の銃猟に関して一定の経験を有していることなどを定めることを想定しております。
また、検討中のため、これらの要件を満たす人数を現段階で正確にお答えすることは難しいところでありますが、全国で銃猟の狩猟免許所持者は約九万人であり、うち、例えば熊の銃猟等の経験がある方は、現在把握しているだけで、少なくとも三千人程度いると認識しております。
○沼崎委員
人数をお尋ねしたのは理由がありまして、今、捕獲の担い手であるハンターが非常に高齢化していて、また、この人数も非常に年々減少しているという、そのようにお伺いしています。
現状、今、人数をお伺いしましたけれども、では、今どんどん減ってきているハンターの数、担い手を確保していくためにはどういった取組をこれからしていくのか。また、今までにも、減っている中ではありますけれども、何かそういった対策が行われていたのか、お聞きいたします。
○植田政府参考人
お答えいたします。
ハンターの現状といたしましては、狩猟免許所持者の総数は、平成二十四年度に昭和五十年以降最低の十八万一千人を記録した後はやや増加に転じておりまして、令和二年度は二十一万九千人となっております。特に二十代、三十代の若い世代で狩猟免許所持者が二倍以上に増加しております。
銃猟を含めた捕獲の担い手の育成、確保の対策としましては、その状況にかかわらず、現在も、狩猟の魅力を伝え、狩猟免許取得を促すための狩猟フォーラムの開催、指定管理鳥獣対策事業交付金を活用した、自治体による認定鳥獣捕獲等事業者や狩猟者の育成等の取組支援、認定鳥獣捕獲事業者や有害鳥獣捕獲等に関わる狩猟者の狩猟税の減免措置、あるいは人材データバンクによる専門人材の紹介、こういった取組を実施をしてきておりまして、関係省庁と協力しつつ、更に充実させて取り組んでまいりたいと考えております。
○沼崎委員
引き続き、せっかく改正して使えるようになっても、使える人が、ハンターがいないということでは改正もうまく機能しないと思いますので、ハンターの担い手確保というところにも取り組んでいただきたいと思います。
ちょっと次の質問に移らせていただきます。
これまで、熊類が人の日常圏内に出没した際には、警察官執務執行、第四条の適用によって、警察官の命令で銃猟を行ってきました。それが、今回法改正をすると、今度は市町村長の命令で熊等の銃猟を実施させることになります。
本法案が成立した後も、警察官の命令による銃猟の適用、それも引き続き考えられますが、警察官執務執行法を適用するのか、それとも本法案による市町村長命令による執行とするのか、銃猟とするのか。そこの判断基準はどのように区別して、また運用していくか。その点についてお伺いしたいと思います。
○植田政府参考人
お答えいたします。
本法案に基づく緊急銃猟は、危険鳥獣が人の日常生活圏に侵入し、膠着状態にある場合において、安全確保等の措置を講じた上で、従来より予防的かつ迅速に銃猟を行うことができるようにするものであります。
したがいまして、今後は本法案に基づいて対応することが基本となると考えております。ただ、例えば今まさに人が襲われそうな場合など、現場の状況によっては警察官職務執行法を適用する場合もあり得るものと考えております。
警察とは制度設計の段階から調整しているところでありまして、地域住民の生命身体への危害を防ぐため、現場における退避、誘導等について緊密に連携して対応してまいりたいと考えております。
○沼崎委員
判断に迷わないようなマニュアルのしっかりした整備というのも、警察とも連携して作っていただきたいというふうに思います。
ちょっと一つ、前の質問で追加をさせていただきますけれども、実際に緊急銃猟ができるハンターの、どの人ができるのか、そういったことが現場で判断ができないと要請が非常に難しくなると思いますけれども、そこに対する対応というのは何か考えていますでしょうか。
○植田政府参考人
お答えをいたします。
確かに、御指摘のとおり、現場におきましては、きちんと経験のある、熊の生態にも詳しいハンターが判断を下し、市町村が最終的な責任を取るという体制が重要であると思っております。
市町村によりましては、その人材が今現在は少ないこともあり得ますので、環境省としましては、熊人材のデータバンクというものを新しく立ち上げまして、市町村でそういった人材に困ることがないように対応したいと思っております。
○沼崎委員
次の質問に移ります。
本法案では、緊急銃猟の実施により損失を受けた者に対しては、市町村長が損失の補填をすることとなっています。
そこで、損失として認められる範囲はどの程度まで認めていくのか。また、損失の補填に市町村が加入する保険等を用いることが想定されていると思いますが、その保険料はどのように賄うことを想定していますか。市町村の過度な負担が出ないか、その点についてお伺いしたいと思います。
○植田政府参考人
お答えいたします。
改正法案に基づく緊急銃猟におきましては、熊が建物に立てこもった場合などにおいて、発射された弾丸が建物の内壁を損傷する可能性があること等を踏まえて、市町村による損失補償制度を盛り込んだところであります。
こうした損失補償の考え方につきましては、ガイドラインを作成をして、市町村等に対して説明会を開催することによりその内容の解説と周知を図ってまいりたいと考えております。
また、御指摘の補償損失に用いる保険料につきましてでありますけれども、自治体負担につきまして、関係省庁と協議の上、適切に支援をしてまいりたいと考えております。
○沼崎委員
この改正が市町村の過度な負担にならないような、そういった工夫もされているというふうに認識いたしました。
次の質問になります。
緊急避難時には捕殺もやむを得ない、安全の確保という意味ではこういった緊急銃猟もやむを得ない一方で、被害を予防していくということも非常に重要だと思います。そもそも、熊類の被害が増えている理由というのが、高齢化あるいは過疎化でゾーニングが非常にしづらくなっている、あるいは、庭に生えているような柿の実が、それを狙って熊が下りてきてしまって非常に人と接近してしまう、そういったことも考えられます。寒村の高齢化、過疎化により、人から追われることが減って、だんだん人への警戒心が薄れてきているということも、被害が増えてきている、そういった理由になっていると思います。
これからますます高齢化が進んで、過疎がもっと進んでいく地域も想像されますので、より被害が広がる可能性がありますけれども、こういったことに対する対策というのは何かございますでしょうか。
○植田政府参考人
お答えいたします。
熊の被害対策は、御指摘のとおり、山村地域の高齢化や過疎化等の地域の実情を踏まえて実施していく必要があると考えております。
このような地域におきましては、熊の被害防除を進めるため、環境省では、指定管理鳥獣対策事業交付金において、都道府県等が実施する、熊の捕獲等事業、集落等の周辺における放任果樹等の誘引物の除去や、緩衝帯や侵入防止柵の設置といった出没防止対策事業、あるいは出没時の体制構築事業などの支援を行っております。
令和七年四月からは、市町村が実施する熊の出没防止や出没時の対策事業を間接交付による支援対象とする予定であり、従来からの都道府県等に加え、市町村とともに、鳥獣対策の担い手の確保も含めて、地域の状況に応じた効果的な鳥獣対策に取り組んでまいりたいと考えております。
○沼崎委員
最後の質問になります。
本当に、できれば共存をしていく、そういったことが非常に望ましいことだと思いますけれども、すみ分けや生息域の環境整備、また、熊等の生態をしっかり理解して、人に近づけない、近づけさせない工夫をしていくこと、自然生物の共存を可能とするための対策について、何か今環境省として取り組んでいることがあればお聞きしたいのと、また、今後、しっかり共存していくための対策、方針についてもお尋ねいたします。お願いいたします。
○浅尾国務大臣
お答えいたします。
熊対策は、人と熊とのすみ分けを図るという考えの下、捕獲だけでなくて、生息環境の保全、整備や人の生活圏への出没防止など、総合的な対策を講じることが重要であります。
こうした対策は関係省庁が連携して取り組むことが必要であり、令和六年四月に関係省庁とクマ被害対策施策パッケージを取りまとめております。
この施策パッケージにおいては、今般の改正案において具体化した住居集合地域等や建物内での銃猟の検討のほか、針葉樹と広葉樹が交じり合った森林や広葉樹林への誘導といった熊の生息環境の保全、整備、人の生活圏への出没防止のための追い払いや放任果樹等の誘引物の管理への支援など、捕獲に偏らない総合的な対策を進めることとしております。
今後も、人と熊とのすみ分けを図ることで、熊の被害を抑制するとともに、施策パッケージの方針の下、国民の安全、安心の確保に取り組んでまいりたいと考えております。
○沼崎委員
ありがとうございます。
引き続き、共存、また、しっかり安全の確保に向けて取り組んでいただきたいと思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○近藤委員長
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時十分散会