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第211回国会 衆議院 経済産業委員会環境委員会原子力問題調査特別委員会連合審査会 第1号 令和5年4月19日

○近藤(昭)委員
 立憲民主党の近藤昭一でございます。
 今日は、連合審査ということで、質問の時間をいただいたこと、感謝申し上げたいと思います。今、私は環境委員会に所属をしているところであります。
 早速質問に入らせていただきます。原子炉の脆化についてまず質問させていただきたいと思います。
 政府は、今回の束ね法案によって、原子力発電所の運転期間を原則四十年、例外的に二十年延長を可能とする現行制度を変更し、原発が運転を停止した期間の延長を可能とすることで、実質的に六十年を超えてでも運転できるようにするとしているわけであります。まず、確認したいわけでありますが、原発が運転を停止していた期間であっても原子炉の脆化、劣化はあると私は考えるのでありますが、それでよろしいでしょうか。

○山中政府特別補佐人
 お答えいたします。
 原子炉施設の経年劣化につきましては、例えば、原子炉の中性子脆化などは運転に伴って生じる劣化であり、運転停止中には考慮しなくていいとされております。一方で、コンクリート構造物の中性化などの運転のいかんにかかわらず進展する劣化もあると認識しております。

○近藤(昭)委員
 コンクリート等の劣化はあるけれども、炉の劣化はないという認識でいらっしゃいますか。

○山中政府特別補佐人
 お答えいたします。
 運転停止中は、原子炉圧力容器の中性子脆化による劣化はございません。

○近藤(昭)委員
 続きまして、経年による原子力事故についてということで御質問させていただきたいと思います。
 今年一月に、福井県の高浜原発四号機で、運転中に原子炉内の核分裂の状態を示す中性子の量が急激に減少したという異常を知らせる警報が出ました。そして、原子炉が自動停止するという事故が起きたわけであります。山中委員長は、原子炉を止めるという非常に重要な部位のトラブルなので原因究明をするとともに緊張感を持って取り組んでほしいと指摘されました。
 高浜原発四号機は一九八五年に運転開始で、既に三十八年たっており、経年による劣化が見逃された例だと私は思うわけでありますが、このように経年による劣化が見逃されてトラブルが発生した、こういう例はほかにはありますでしょうか。

○森下政府参考人
 お答えいたします。
 御指摘の高浜発電所四号機のトラブルでございますけれども、施工時に引き回したケーブルが覆いかぶさった状態が継続し、そのため、過大な荷重がかかって生じた不具合でございます。施工に問題のない状態で起きる劣化とは異なるものではございますが、委員御質問の経年による劣化が見逃されたトラブルの事例といたしましては、平成十六年八月に発生した美浜発電所三号機の二次系、放射性物質が含まれていない冷却系の配管が破損した事故がございます。この事故の原因につきましては、関西電力が本来点検すべき配管を点検しなかったため、当該配管が腐食や浸食を受けて、徐々に配管の厚さが減少した結果、強度が低下して破損したものでございます。
 以上です。

○近藤(昭)委員
 もちろん、現場で頑張っていただいている方、また関係の皆さんは、緊張感を持って現にやっているということであります。しかしながら、よく指摘されるわけでありますが、原子力発電所の原子炉に関わるところは非常に複雑な構造であって、配管の距離数等々を、足すとといいましょうか、数えると大変に大きな距離になるわけであります。そういう中で、どうしても見逃しというようなことが起きてくるんだということもあると思います。そのことがあった、こういう事実を確認させていただきました。
 この間も、東電福島第一原発事故が起きた、残念ながら万が一の事故があった、そうしたことが全く想定されていなかったわけではないけれども安全神話のとりこになっていた、そういう中で、あの事故を反省に法案が様々作られてきた、こういうことであるわけであります。政権が替わった後も、私は野党の議員として、この問題について環境委員会あるいはその他の委員会で質問させていただきました。それで、お聞きをしたいんです。以前お聞きしたことの確認でありますけれども。
 東電の福島第一原発事故では、使用済核燃料プールへの放水活動、これは、東京消防庁を始めとする大阪市、横浜市、川崎市といった大都市の消防本部に属する、当時は二百六十名だったと思いますが、総員二百六十名の消防隊員の献身的な活動によって成し遂げられた。二〇二一年二月二十六日に予算委員会の第二分科会で私は質問させていただきました。当時の消防庁次長は、東日本大震災で東京消防庁等が行っていただいた放水作業あるいは冷却作業、そういったことは基本的には想定されていないと答弁されております。つまり、消防の業務の中には入っていないと。
 消防業務というのはあくまで自治でありますから、もちろん、全国から連合で消防組織をつくる、こういう特別な仕組みもあるわけでありますが、基本的にはオンサイトについては事業者が行うということであり、消防庁としては今申し上げたように想定していないという答弁だったわけでありますが、これは今も変わらないでしょうか。

○鈴木政府参考人
 お答え申し上げます。
 東京電力福島第一原子力発電所の教訓を踏まえまして、原子力規制委員会では、原子炉等規制法に基づきまして、重大事故が発生した場合に必要な施設、設備、人員等を原子力事業者において確保することを前提に原子力発電所設置の許可が行われているというふうに承知しております。
 したがいまして、東日本大震災で東京消防庁などが行いましたような放水作業あるいは冷却作業を消防機関が行うこと、これは基本的には想定されていないと考えております。
 なお、万が一原子力事業者だけでは十分な措置を講じることができない場合には、それまでに得られた情報あるいは通報内容などを踏まえまして、原子力災害対策本部による調整の下、消防機関などの実動機関が、十分な安全を確保した上で、対応可能であると認めた活動の範囲内で事故収束活動の支援を行うというふうにされておるところでございます。

○近藤(昭)委員
 ありがとうございます。
 今、状況を見ながら支援をすると。支援というのはどういう意味だか、ちょっと御説明いただきたいんですけれども、基本的にはオンサイトは事業者だ、こういう認識でよろしいでしょうか。そして、支援というのはどういうふうな支援のことを想定しておられるのか。
 私が懸念するのは、法律的にはオンサイトは事業者だというふうに規定しているんだと思うんです。消防庁は基本的にはやらないということなんだと思うんです。そして、いろいろと状況によってはやるとおっしゃっても、そうした装備等々がどのように整備をされているのかとか、言葉で言うほど簡単なことではないですし、仕組みとしてちゃんとやられているのかということが非常に重要だと思うんですが、いかがでしょう。

○鈴木政府参考人
 お答え申し上げます。
 オンサイト対策につきましては、事業者の責任において実施すべきものでございますけれども、万が一事業者だけで十分な措置を講じることができない場合には、先ほど御説明申し上げましたように、原子力災害対策本部による調整の下で消防機関などの実動機関も事故収束活動の支援を行うとされておりますので、この枠組みの中で対応してまいりたいと考えております。

○近藤(昭)委員
 余り時間を取ってもあれなんですが、そうすると、状況次第でオンサイトにも行く、こういう理解でいいのかということであります。そのことを確認したいのと、当時、放水作業等を行った隊員の皆さんのその後の健康状態はどうであるのか、がんや重い症状を発症したり亡くなったりされている方はいらっしゃらないのかということを確認したいと思います。
 当時は、ある種の特別な状況の中で当時の政権が東京消防庁に依頼をしてやった、例外的な対応だったと思います。例外的な対応であった、だから対応された方で病気になられた方にはきっちりとフォローを、フォローというか、後をきちっとケアしていくように、こういうことも、当時はある種の依頼のような形で行われたと思うんですね、法的な仕組みとしてはできていないのではないかと思うんですが、よろしいでしょうか。

○鈴木政府参考人
 お答え申し上げます。健康管理の関係でございます。
 消防庁といたしましては、緊急消防援助隊として福島第一原子力発電所で核燃料プールへの放水活動に従事した職員の安心あるいは長期的な影響の確認に資するため、平成二十四年度から、医療、消防関係者から成る、福島原発事故において活動した消防職員の長期的な健康管理審査委員会を設置いたしますとともに、血液検査などの追加検査の機会確保を図るなど、健康管理の支援を行ってきております。
 放水活動に従事されました緊急消防援助隊員の方で、消防庁の健康管理支援を利用されている方につきましては、福島第一原発事故の影響で亡くなったり、あるいは重篤な症状となったと判断された方はいらっしゃらないというふうに承知をしております。
 また、職員の派遣につきましては、消防組織法に基づく緊急消防援助隊の派遣の仕組みの中で活動されたというふうに承知しております。

○近藤(昭)委員
 最後にもう一つだけお聞きしたいんですけれども、当時、双葉町の消防団がオンサイトの作業に行くかどうかということで、非常に現場での葛藤が起こるわけですよね。本来の法的なことでいうと、地元の消防隊はオンサイトの作業には当たらない。しかし、大変な緊急事態で、それぞれの隊員の皆さんの非常な使命感ということで、行く行かないということの現場での大変なやり取りがあるわけであります。
 これは法的な確認です。緊急で広域の消防組織がつくられることはある、そこで対応されるということでしたが、いわゆるそもそもの元々の自治体の消防隊というのはオンサイトに行くのか行かないのか、法的にどういうふうになっているのか確認をしたいと思います。

○鈴木政府参考人
 お答え申し上げます。
 災害時の活動は、都道府県内の消防力では対処が困難な場合に、被災地の都道府県知事からの要請などに基づきまして、消防庁長官が、被災地以外の都道府県知事等に対して、緊急消防援助隊を被災地に出動させ、消防の応援を行うよう求めや指示ができるとなっております。この消防組織法の枠組みに基づきまして今回活動がなされたということでございます。
 また、どのような活動をするかにつきましては、基本的には、緊急消防援助隊の活動内容は、消防庁長官は指揮監督権を持っておりませんで、現地の実情を把握している被災地の市町村長の指揮の下で適切に調整し、行動がなされるというふうに承知しております。

○近藤(昭)委員
 この問題だけに余り時間を取っていると次の質問ができませんけれども、消防の本来的なことでいうと、本来的というか、仕組みの中でいうと、オンサイトについては地元の消防隊は入らないということだと思うんです。
 さて、次の質問に行きたいと思います。避難計画の実効性、福島からの避難者についてということであります。
 二〇二一年三月の水戸地裁判決は、避難計画の実効性不備などを理由に、茨城県の東海第二原発の運転差止めを命じました。原電が再稼働の事前同意を県や立地周辺六市村に求める大前提となる広域避難計画策定が進んでいないということであります。策定義務がある県と三十キロ圏内の十四市町村のうち、策定済みは県と五市町のみで、昨年一年間で新たに作成した市町村はないと報道されています。
 この避難計画の策定義務のある県と十四市町村の避難対象者の数は何人であって、避難する場合、バスで移動するとすると何台のバスが必要になるのか、お尋ねをしたいと思います。

○荒木政府参考人
 お答えいたします。
 今御指摘のあった東海第二地域の原子力災害対策重点区域につきましては、平成三十一年三月改定の原子力災害に備えた茨城県広域避難計画によれば、人口が約九十四万人とあり、非常に多いことが特徴の一つでございます。
 茨城県によれば、原子力施設からおおむね五キロ圏内ではバスが四百台から五百台、同じくおおむね五キロから三十キロ圏内では、仮に一斉に避難や一時移転をすることとした場合の単純合計では約三千台が必要と推定していると聞いております。なお、これは自家用車で避難できない方々のためのものであり、アンケートに基づいて必要人数を計算したものと聞いてございます。
 なお、今申し上げましたおおむね五キロから三十キロ圏内では、まず屋内退避をしていただき、放射線量が高くなった場合に、その地区の住民が避難や一週間程度内での一時移転を行うこととなります。したがって、必ずしもおおむね五キロから三十キロ圏内の全住民が一斉に避難や一時移転を行うわけではございません。
 いずれにしましても、避難手段としての自家用車での避難をすることができない方々のために相当数の車両を確保することは重要でございます。現在、バス協会などと協力体制の構築に向けた調整を進めております。
 内閣府としましては、引き続き、東海第二地域原子力防災協議会の枠組みの下、これら課題に的確に対応できる地域防災計画、避難計画の策定に向けて、関係自治体と一体となってしっかりと検討を進めてまいります。

○近藤(昭)委員
 ありがとうございます。
 状況によっては避難、退避もということでありますが、ただ、避難計画は、最悪というか、とにかく厳しいときにどういうふうに対応するかということを策定しておかなければいけないわけであります。
 バスを三千台とするわけです、三千台のバスが必要だ、そうすると、私の計算ですが、五十人乗りだとすると十五万人の移動であります。十五万人しか移動できない、対象人数に対して残りの八十万人近い方が、逃げるとすればですが自家用車で移動する、四人乗りだとしても二十万台の自動車が移動することになるということであります。大渋滞どころか、想像するだに、何ですかね、驚くようなことでありますし、もう一つ、今おっしゃるようなことで、三千台、地元のバス協会と調整中とおっしゃりますが、三千人もの大型免許を持った運転手さんが確保できるのかと私は思うわけです。
 非常に放射線のことで危険な状況だから避難をする、東日本大震災、東電福島第一原発の事故のときもそうだったと記憶していますが、そういう危険な状況の中で、放射線がある下で例えば一定のレベルを超えていないとしても、やはりそこに行く方に、先ほどの消防隊のこともそうでありますけれども、そうしたところに入る入らないというのは非常に葛藤を生むわけであります。葛藤を生む、それでも公的な機関の場合は、場合はと言うと失礼でありますが、まだ一定程度の法律があるわけであります。しかしながら、民間のバス会社の中でそうした運転手さんが確保できるのかというのは、私は非常に疑問を持つわけであります。
 さて、そういう中で、事故が起きてから万が一を想定しつつ原子力事業また原子力事故に対する対策は行っていかなくてはならないということでありますけれども、現在の避難者の方の人数についてお伺いをしたいと思います。
 私は二年前の環境委員会でも指摘をさせていただいたんですが、福島県が公表する避難者の方の数と市町村が公表する避難者の数字には大きな違いがあるわけであります。特に、県内避難者の数字については、例えば、県が公表している双葉町の数字は三百九十四人であります。県が公表しているものが双葉町に関しては三百九十四人、町が公表している数字は三千九百六人であります。県が公表している県内避難者の数は約十分の一に近いわけでありました。十倍違うわけであります。
 きちんとした実態の把握調査を行い、正確な数字を公表すべきではないかと思います。避難者の方が、公表されている数が県と町で違う、見捨てられたといいましょうか、なきものにされているというようなことで非常に気持ちとしてつらいものがあるということもあるんですが、いかがでありましょう。

○岡本政府参考人
 お答え申し上げます。
 東日本大震災の避難者数についてのお尋ねでございます。
 復興庁におきましては、全国の避難先自治体の協力を得まして、各都道府県に所在する避難者数を把握、公表してございます。福島県内の避難者数につきましては、福島県から報告を受けた数値を公表しているところでございます。
 一方で、お尋ねがありました福島県の一部の市町村におきましては、それぞれ市町村独自の基準で避難者数を把握、公表してございまして、例えば御指摘のありました双葉町でございますが、これは、東日本発災当初、平成二十三年三月十一日時点の人口を基本としまして、その後の死亡者あるいは転入者等の調整を行うものの、他の市町村へ転出し避難元に戻られる意思のない方についても引き続き避難者数に含める扱いとしていると承知しております。
 このように、各市町村におきましてはそれぞれの考え方で避難者の数を公表しておりまして、福島県それから復興庁が公表する数字と差が生じているものと承知しております。
 いずれにしましても、復興庁としましては、引き続き福島県と連携をいたしまして、避難者数の適切な把握に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

○近藤(昭)委員
 ありがとうございました。
 これも余り深追いはしませんけれども、避難をしていらっしゃる皆さんから聞いているお話で、私の感じていることだけ申し上げます。
 それは、多くの方が避難をした、復興住宅等々ができて戻った、確かにそういう意味では当初の避難者の数からは数えられなくなった、しかしながら、自分の生まれ育ったところに帰れない方は本当にたくさんいらっしゃる。こんなことを言うと大変に恐縮ですが、高齢の方は戻れないかもしれないわけであります。そして、家族の中でも、高齢者の方は戻れる場合があるけれども、若い方々は子供さんがいらっしゃったりすると戻らない決定をしたりする。つまり、家族が分断をされているわけですね。
 私が申し上げたいのは、原子力事故は万が一が残念ながらあったときの影響がいかに大きいか、そうしたことがあるにもかかわらず、なぜ今回このGX推進基本法の中で原子力政策をまた進めていくのか、以前に回帰していくのか、これを大変に危惧しているということであります。そういう中で申し上げました。
 さて、運転期間規制の在り方について質問させていただきたいと思います。
 今回の法改正によって原発は実質的に六十年を超える運転ができるようになるわけでありますが、電気事業法改正案第二十七条の二十九の二第一項は、原子力発電事業者が、ちょっと略しますけれども、発電用原子炉を運転することができる期間を原子炉等規制法第四十九条第一項の検査に合格してから起算して四十年とするとしていますが、四十年を一つの区切りにしている理由は何でありましょうか。

○西村(康)国務大臣
 今回この措置を検討するに当たりまして、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会におきまして、有識者に参画をいただき、この期間について複数の政策措置を比較検討を行ったところであります。
 具体的には、様々な意見がございました、一つには、アメリカやフランス、イギリスなど、運転期間について特段の期限を設けていない、こうした国々がありますのでそうする案、二つ目として、現行制度を変更せず、そのまま維持する案、三番目の案として、今回の私どもの案でありますが、現行の枠組みは維持した上で運転期間のカウントから震災後の他律的な要因によって停止していた期間を除外するという、三つの案を検討したところであります。
 様々議論がございましたけれども、御指摘のように、福島第一原発の事故を踏まえ、制限を設けた現行規定の趣旨も考慮すべきということなども総合的に勘案して、最終的に私どもとして、運転期間は四十年、延長を認める期間は二十年とした現行制度の枠組みは維持した上で、先ほど申し上げたように、運転期間のカウントから他律的な要因によって止まっていた一定の停止期間を除外することを認めるという、利用の立場からいわば自己抑制的に政策判断をさせていただいたというところであります。
 いずれにしても、利用政策の観点からそれだけの延長をしたいと思っても、規制委員会の安全基準に適合しないと運転できないわけでありますので、安全基準については規制委員会がしっかり審査をされるということでありますので、是非この点も御理解いただければと思います。

○近藤(昭)委員
 それで、お伺いをしたいんですけれども、二〇二〇年七月の、経年劣化管理に係るATENA、原子力エネルギー協議会との実務レベルの技術的意見交換会の結果を踏まえた原子力規制委員会の見解案についてであります。
 四で、運転期間延長認可の審査においては、原子炉等の劣化の進展、とりわけ取替え困難な機器等の劣化の進展に関する知見の収集整理が重要であり、今回のATENAとの意見交換は、発電用原子炉施設を構成する機器及び構造物のうち取替え困難なものについて、経年劣化の要因となり得る事象ごとに、長期停止期間中に劣化が進展するか否かについての知見を整理したものである、そしてその結果として次のことが確認されたとして、先ほどもありましたけれども、コンクリート構造物の中性化、塩分浸透、アルカリ骨材反応、機械振動、凍結融解による強度低下、原子炉圧力容器のスタビライザー等の摩耗といった事象について、長期停止期間中もそうでない期間と同様に劣化が進展をしたとあるわけであります。
 これら長期停止期間中もそうでない期間と同様に劣化が進展するものについて、四十年という安全規制をなくしてもよいという要望をATENAと事業者との意見交換で聞いた事実はありますでしょうか。

○山中政府特別補佐人
 お答えいたします。
 当時、事業者側から、運転期間延長認可の審査に関して、運転停止期間における安全上重要な設備の劣化については技術的に問題ないと考えられることから、安全規制の枠組みの中で、劣化事象の区別なく四十年という運転期間から運転停止期間を除外してほしいとの要望がございました。

○近藤(昭)委員
 ありがとうございます。そういう要望が事業者側からあったということを確認させていただいたんですけれども。
 さて、これら長期停止期間中もそうでない期間と同様に劣化が進展するものについて、これは見解案の中に入っているわけですが、四十年という区切りをなくしてもよいかどうかという議論を、昨年十月に資源エネルギー庁の話を原子力規制委員会で聞いて以降、原子力規制委員会で審議した事実はありますでしょうか。

○山中政府特別補佐人
 お答えいたします。
 科学的、技術的に一定の期間を除外することは困難であるから、現行の運転期間延長認可制度に基づく劣化評価は、長期停止期間中を除くことなく、暦年ベースの四十年目に行うこととしております。この暦年ベースで評価を行うという考え方につきましては、今般の規制制度案においても維持することを昨年十一月二日の規制委員会で確認いたしました。

○近藤(昭)委員
 そうした要望があった中で、劣化はあるという中で、しかしながら四十年という年限でそのことを審査するということを原子力規制委員会で審議したということでよろしいでしょうか、確認ですが。

○山中政府特別補佐人
 お答えいたします。
 運転停止期間中にも劣化する材料がございますので、暦年で我々は審査をしていくという、これに変わりはございません。

○近藤(昭)委員
 劣化していくものがあるということであります。
 さて、今回、原子炉規制法第四十三条の三の三十二で、運転期間の代わりに、運転開始から三十年以後、十年ごとに老朽化原発の長期施設管理計画を認可する枠組みを設けたわけであります。これに対して、石渡委員は、運転期間を落とすのは安全側への改変とは言えないとして反対されましたが、その反対があったにもかかわらず法改正を了承したわけであります。実際、二〇二〇年見解で書かれた長期停止期間中もそうでない期間と同様に劣化が進展するものについて、先ほどもちょっとお話がありましたが、どのようにしていくのか、具体的にお尋ねをしたいと思うんですね。
 まず、長期施設管理計画制度の中身は、原子力規制委員会の高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チームが、今、現在進行形で長期施設管理計画の許可基準を議論していると聞いております。二〇二〇年見解で書かれたコンクリート構造物の中性化、塩分浸透、アルカリ骨材反応を起こす箇所はどう規制をかけていくのか、具体的にどのような許可基準となるか、教えていただきたいと思います。

○大島政府参考人
 お答え申し上げます。
 御質問の、コンクリート構造物の中性化、塩分浸透、アルカリ骨材反応についての認可基準でございますけれども、まず、現行の運転延長認可制度で用いてございます、実用発電用原子炉の運転の期間の延長の審査基準というものを定めてございます。
 この審査基準の中で、具体的には、中性化につきましては、評価対象部位の中性化の深さが鉄筋が腐食し始める深さまで進行しているか又は進行する可能性が認められる場合には、その部位を構成する部材又は構成材が耐えられる力、耐力と申しますけれども、これが設計荷重を上回ることを評価して確認するということでございます。同じように、塩分浸透についても、評価対象部位に塩分浸透による鉄筋腐食により有意なひび割れが発生しているか又は発生する可能性が認められる場合に評価を行い、その耐力が設計荷重を上回っていること、また、同じように、アルカリ骨材反応につきましても、評価対象部位にアルカリ骨材反応による有意なひび割れが発生している場合は、評価を行った上で、構造材等の耐力が設計荷重を上回ることとしてございます。
 これらの審査基準につきましては、新たな規制制度においても基準とすることができるというふうに考えてございます。

○近藤(昭)委員
 ありがとうございます。
 さて、こうした規制について一律に期限を設けているのが現在の原子炉等規制法、しかしながらこれは一律に期限を設けている、これが現在の規制法ではないかと思うわけです。石渡委員が言った、運転期間を落とすのは安全側への改変とは言えないとの指摘は、先ほどから申し上げましたように、経年劣化をどういうふうに審査していくか、あるいは見落としがある等々、大変に大きな施設であって見られない部分がある、そういう意味では石渡委員の指摘は正しいと私は思うんですが、いかがでありましょうか。

○山中政府特別補佐人
 お答えいたします。
 これまでの運転開始後四十年時点での六十年を見据えた劣化評価におきましては、六十年時点で基準への適合性が確認されており、運転開始後六十年の時点で運転を制限しなければならないという科学的、技術的な知見はございません。
 そのため、運転開始後六十年で運転を制限することは科学的、技術的な判断ではないと考えております。そのような対応は原子力規制委員会が行うべき安全規制であるとは考えておりません。

○近藤(昭)委員
 委員長のおっしゃっていることは、福島第一事故が起きて、規制のとりこになっていた、その反省から原子炉等規制法が改正されたりとかですね、前も指摘させていただいたように、規制委員長は三条委員会の委員長で天皇陛下の認証官であって独立性が高いにもかかわらず、私はやはり結果的に規制を緩めていくことになると思うんですね。規制を緩めていくことになる、あの反省が生かされているとはとても思えないわけです。
 それで、最後に、もう時間もなくなってまいりましたのでお聞きしたいんですけれども、電気事業法改正であります。原子炉規制法から電気事業法に変えるということが、ますます推進の側に、あの規制と推進を分けることは何だったのかと思うわけであります。
 さて、延長しようとする運転期間が二十年を超える場合にあっては、その二十年を超える期間が次に掲げる期間、二〇一一年三月十一日以降の期間に限る、を合算した期間以下であることとして、イ、ロ、ハ、ニ、ホの五項目が掲げられたわけですね。しかし、原子力規制委員会の二〇二〇年見解で書かれた、先ほどから言及しておりますが、コンクリート構造物等の劣化の問題でありますけれども、こうしたことが起こるわけでありまして、こうしたことに対してどのように規制をしていくかということは非常に重要だと思うんです。  そういう中で、指摘をさせていただきたいと思うんですが、原発の所管大臣として、長期停止期間中もそうでない期間と同様に劣化が進展する、つまり老朽化する部分がある、そして残念ながら見逃すこともあるにもかかわらず、先ほど挙げたイ、ロ、ハ、ニ、ホのいずれかの理由であっても延長することは許されることだと大臣はお考えでしょうか。

○西村(康)国務大臣
 今回の改正は、まさに利用と規制を明確に法律上分けるものでありますので、いわば震災で、福島第一原発の事故の後、残されていた宿題、特にこれは、規制委員会が令和二年七月に見解を出されて、運転期間は規制委員会が言うべき話ではない、利用政策だという見解を出されて以降の我々にとっての大きな課題であったわけであります。それを、まさに利用と規制を分けるための法改正だということをまず理解していただければと思いますけれども。
 いずれにしても、この見解を踏まえて我々は分けたわけですが、原子炉規制法においては、運転期間の規定を削除した上で、先ほど来御説明がありますように、三十年を超えて運転しようとする場合は十年ごとに、安全規制の厳格化がありますので、それを受けないとできないということでありますから、高経年化を踏まえた技術的観点については高い独立性を有する原子力規制委員会が厳格な安全審査を行って、その認可を受けなければ運転は一切認められないということであります。
 今回、私どもは、四十年、二十年という基本を維持しながら、他律的な要因で止まっていた期間についてはそれを除外して利用期間として申請できるというふうな趣旨で規定を変えたわけであります。しかし、そうだとしても、そういうふうに認めたとしても規制委員会の厳しい基準を満たさないと運転できないということでありますので、是非この点を御理解いただきたいと思います。

○近藤(昭)委員
 質問時間が終了いたしますので、最後に指摘とお願いをさせていただいて、質問を締めくくりたいと思うんです。
 先ほども委員の指摘にもありましたが、エネ庁と規制庁が事前に意見交換をしていたわけであります。これはやはり私は問題だと思うんです。そして、そのやり取りを、当初は、文書はない、していないというようなことでありましたが、途中からそれを認めた。でも、認めたけれども中身については決して問題がないというような御答弁であるわけであります。しかし、そのことに問題がないかということをきちっと検証したいにもかかわらず、資料請求をしても黒塗りで出てきたんです、黒塗りで出てきました。環境委員会で、理事会での公開を求めました。審議をしていただいたわけでありますが、出てこなかったわけであります。
 そういうことが出てこなかった中でこの委員会の審議が行われておるわけでありますが、私は、もう一度、黒塗りの資料を公開していただきたい、是非委員長に理事会にお諮りをいただきたい。やはり、どんなにおっしゃっても、それは問題がないことだと言っても、見せてもらわないと分からないわけです、チェックをしないと。そういうことをもう一度要望したいと思いますが、お取り計らいをお願いしたい。
 もう一つ、先ほどもありました、原子力委員会の高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チームがつくられた、そして長期施設管理計画を検討しているわけであります。この許可基準、つまり、延ばすことに対する、どういう許可の内容で行われているのかということが分からないうちに延長を認めるということになると、白紙委任することになると思うんですね。ですから、きちっと、議論中の許可基準について公開で、委員会として、公開の場で説明をしてもらいたい、このこともお取り計らいをいただきたいと思うんです。
 当時、吉田所長は、亡くなられましたけれども、事故が起きた直後にも、まさしく大変な事故だった、あれは関東圏が壊滅状態になるような危機的な状況だった、しかし、そういうのを免れたというのは奇跡的だったと。奇跡的だったと、あの吉田所長がおっしゃっているわけですよね。まさしく私もそう思います。
 そうしたことを考えた上で非常に厳しい基準を作ったわけでありますけれども、その最大の基準は、やはり六十年で止めるということが一つの大切な基準だったんです。それは、いろいろなことが、検査も漏れることがあるし、何が起こっているか分からない、人間のやることだからと。こういうことですし、そういう状況で起こった、そして、そのことには今は規制があるのに、それを緩めるようなことにしか、私は今の法改正がそうとしか見えない、思われない、このことを改めて指摘させていただいて、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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