第211回国会 衆議院 環境委員会 第3号 令和5年4月4日
おはようございます。立憲民主党の近藤昭一でございます。
今日も環境委員会で質問の時間をいただいたこと、感謝申し上げたいと思います。
実は、この委員会でも東日本大震災、東電福島第一原発事故に関連しての質問を何回かさせていただいているところであります。その中でのテーマ、子供たちの甲状腺がんの問題についても質問させていただいているところであります。今日もその問題に関連して質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
環境省はホームページに、国連科学委員会、UNSCEARの二〇二〇年報告書概要というのを掲載して、その結論を環境省は支持しているということであります。改めて申し上げますと、報告書の名前は、二〇一一年東日本大震災後の福島第一原子力発電所における事故による放射線被曝のレベルと影響ということであります。この概要は、被曝した子供たちの間で甲状腺がんの検出数が大きく増加しているとしています。
さて、そういうことでありますので、その報告書に書かれているわけであります。つまり、甲状腺がんの多発はUNSCEARも環境省も認めているということでいいかどうかを確認したいと思います。イエスかノーかでお答えいただけるとありがたいです。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
UNSCEAR、国連科学委員会の報告書のプレスリリースにおきましては、被曝した子供たちの間で甲状腺がんの検出数が予測と比較して大きく増加していると記載されておりますが、この点につきましては、検出数が大きく増加している原因は放射線被曝ではない、むしろ非常に感度が高い若しくは精度がいいスクリーニング技法がもたらした結果であり、以前は検出されなかった集団における甲状腺異常の罹患率を明らかとしたにすぎないと記載されております。
検出数が大きく増加しているとは記載されておりますが、甲状腺がんの多発については記載はされておりません。
○近藤(昭)委員
今部長からお答えがあったわけでありますけれども、スクリーニングをした結果である、感度のいい、被曝の影響ではないと断定的におっしゃった気がいたします。そのことを一つ確認したいということと、被曝した子供たちの間で甲状腺がんの検出数が増えていることは確認しないというか認めていない、こういう理解でいいんでしょうか。ちょっと確認したいと思います。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
先ほどの答弁では、報告書に書かれていることを忠実に引用させていただきました。
繰り返しになりますけれども、このスクリーニング技法によって以前は検出されていなかった集団における甲状腺異常の罹患率を明らかにしたにすぎないと。つまり、通常は症状に気づいて受診をして甲状腺がんが見つかるということですが、現在福島県ではスクリーニングをやっておりますので、その結果、無症状の方も含めて検出されているということでございます。
○近藤(昭)委員
そうすると、被曝したことによる甲状腺がんではないけれども、かもというか、そういう報告書のあれかもしれませんが、スクリーニングの結果、甲状腺がんの検出数は増えている、こういうことの確認はよろしいでしょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
検出数が増えているということは報告書にも記載されております。
○近藤(昭)委員
今、報告書の中でおっしゃったわけでありますが、検出数は多い、しかしながら甲状腺がんが多発しているということは報告はされていないということをおっしゃったんでしょうかね。それの確認と、そうすると、検出数が多いのにがんは多発はないという、その根拠はどのように考えていらっしゃるんでしょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
福島県以外でも、三県調査というのを実施しております。青森県、山梨県、長崎県で同様のスクリーニング検査をやった結果、同じような形で発見されておりまして、福島県に特別に検出される、検出数が増えるということではないという確認は取れてございます。
○近藤(昭)委員
そうした報告があるというのは、私もどこかで読んだ記憶はあるわけでありますけれども。検出数が多いということをお認めになったわけでありますけれども、ほかのところと、今幾つか検査のことをおっしゃられましたが、そうしたところに比べて多いという認識ではないということでしょうかね。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
先ほどの繰り返しになりますけれども、以前は検出されなかった集団における甲状腺異常の罹患率を明らかとしたにすぎないということがUNSCEARの報告書に書かれておりますので、数自体が増えたということではないと認識してございます。
○近藤(昭)委員
なかなかちょっと分かりにくいところもあるわけでありますが、時間もありますので、次の質問に行きたいと思います。
報告書では、放射線被曝の推定値から推測される甲状腺がんの発生を評価し、子供たちや胎内被曝した子供を含む、対象としたいずれの年齢層においても甲状腺がんの発生は見られそうにないと結論づけたとあるわけでありますが、これは被曝の推定値から推測すると甲状腺がんは発生しないはずだという意味であるかどうか、イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
放射線被曝による甲状腺がんの発生につきましては、委員御指摘のとおりと承知してございます。
○近藤(昭)委員
いや、私の指摘というか、ですから、この報告書で甲状腺がんの発生は見られそうにないと結論づけたわけでありますが、被曝の推定値から推定すると甲状腺がんは発生しないだろう、これを私の認識とおっしゃっているのかもしれませんが、こういうことでよろしいんでしょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
丁寧に読みますと、放射線被曝の推定値から推測される甲状腺がんの発生を評価し、子供たちや胎内被曝した子供を含む、対象としたいずれの年齢層においても甲状腺がんの発生は見られそうにないと結論づけたということですので、放射線被曝の推定値からの結論ということで理解してございます。
○近藤(昭)委員
そうすると、ちょっと認識をお聞きしたいんですが、被曝の推定値の値というのは、ある種被曝の量は低いと受け止めていらっしゃるということでしょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
UNSCEARの報告書ではそのような認識で記載されていると認識してございます。
○近藤(昭)委員
UNSCEARの認識としてはそう書いている、つまり被曝の値は必ずしも高くないということ。そして、それを冒頭申し上げましたように環境省ホームページで掲載し、その結論を環境省は支持しているわけでありますから、そういうふうに報告されているということとともに、それを了としているというか、承認しているということでよろしいでしょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
国連科学委員会で幅広い研究結果を包括的に評価して、国際的な科学コンセンサスを政治的に中立の立場からまとめたものだということでございますので、それを重く受け止め、周知に努めているということでございます。
○近藤(昭)委員
周知に努めているということは、間違ったことを周知するということはないでありましょうから、そうしたいろいろな知見を基にされていることだ、だから一定の了解をしてこれを広めている、こういう理解でよろしいでしょうか。改めて、済みません。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
今、福島県の子供たちは非常に被曝の影響ということで不安をお持ちでございます。また、風評ですとか将来の差別、偏見というようなことも心配してございます。 国連の科学委員会で、健康影響は出そうにないというような子供たちにとって非常にいい報告がまとめられたということでございますので、そういった不安を払拭する、あるいは風評を払拭するという観点から環境省としてもその周知啓発に努めているということでございます。
○近藤(昭)委員
分かりました。子供たちが大変に不安を抱いているというところの認識は一緒であります。やはり大きな不安を抱いている。
ただ、その後のことは、だからこの報告書が安心につながっているかどうかというのは、違った意見もあるのではないかと私は思っています。以前の環境委員会で小泉大臣のときにも質問させていただいたときに、そうした報告なども受け止めながら、被曝と甲状腺がんは関係はないという意見もあるが、政府もそういう方向性が強いが、違う、その不安を受け止めてほしいという要請をさせていただいたこともあってですね。前提は私もよく理解するところでありますが、その後のお話は、私はちょっと違うと思うんですね。私とは違うと思うんです。
それで、一つ質問したいのは、被曝の推定値がどのように推定されたか、被曝の推定値が正しいかということなんです。環境省は、UNSCEARの報告書の推定の仕方及び基のデータと、実際に存在しているモニタリングポストのデータ、その二つをきちんと確認していないのではないかと疑われているということもあるそうでありますが、そのことを御存じでしょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
環境省では、UNSCEAR報告書に対する個別具体的な指摘の全てを把握してはおりません。UNSCEAR報告書は政治的に中立の立場で取りまとめられたものであり、その評価につきましては、学会等の場における国内外の専門家の幅広い議論に委ねたいというふうに考えております。
○近藤(昭)委員
つまり認識していないということなんでしょうかね、それは。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。
UNSCEAR報告書についていろいろな議論があるということは承知しておりますが、個々の具体的な指摘の全てを把握しているわけではないということでございます。
○近藤(昭)委員
全てを把握しているかどうかを聞いているわけではなくて、そのような指摘があるということを認識しているかということでありまして、きちっとお答えいただいていないと思います。
さて、時間もありますので、ここで指摘をしたいと思うんですが、UNSCEARの推定は、寺田論文で示されたモデル、ATDMを用いて、福島のヨウ素131とセシウム137の土壌沈着量から大気中濃度を逆算して行われています。一方で、実際に存在しているデータ、先ほど二つのデータがあるという話をしましたが、実際に存在しているデータとは福島県のモニタリングポストのデータでありまして、三月十五日から十六日にかけて紅葉山を襲った最大のプルームが、放射能の雲でありますが、通り過ぎたときの大気中の濃度であります。
二つを比べると、UNSCEARの報告書の推計した大気中の濃度と地表への沈着量は実際の紅葉山の大気中の濃度データの百分の一にすぎないと指摘されているのであります。つまり、百分の一にすぎない大気中濃度から推計した被曝の推計値は過小評価だという指摘なんですね。
先ほど御答弁の中にあったように、認識をしないというようなことでありましたが、そういう指摘があるということを個別には認識しておられないようでありまして、そういうことの中でUNSCEAR報告を、大変失礼な言い方でありますが、うのみにしているのではないか、そのまま受け入れているのではないかという疑念があるわけであります、懸念があるわけであります。西村大臣はそのような疑いというか、不安というか、懸念が持たれているということを御存じかどうか、教えていただきたいと思います。
○西村(明)国務大臣
今、近藤委員御指摘の、環境省がUNSCEARの報告書をうのみにしているのではないかという疑いを持たれていることではないかということでございますが、これに関しては承知しておりませんけれども、原子放射線の影響に関する国連科学委員会、UNSCEAR、これは、先ほど環境保健部長からもお話があったように、幅広い研究結果を包括的に評価して、国際的な科学コンセンサスを政治的に中立の立場からまとめて、定期的に報告書の形で見解を発表している、そういうものだというふうに承知しております。
なお、環境省とすれば、委員御指摘のように、福島の子供たちの不安、こういったものがあるのは承知しておりますので、福島県の甲状腺がんの子供に対しましてはピアサポートなどの支援を行うほか、放射線の健康影響に係る差別の被害を福島の子供たちが受けないように、風評払拭といった取組に関しましても進めているところでございます。
○近藤(昭)委員
大臣、ありがとうございます。しっかりと子供たちの不安な状況に寄り添ってもらいたいと思います。
私は、先ほど来から部長からもお答えがありますけれども、幅広く様々な知見でやっていて、様々な角度から見ているんだから、ある種正しいんだというような認識で広めていらっしゃるのではないかと思います。
ただ、そういう中で、甲状腺がんの多発の原因はスクリーニング効果だとおっしゃっているわけでありますし、UNSCEARの被曝の推計の基となる大気中の実データが使われていない、つまり百倍も違うわけでありますが、このことをやはり懸念する必要があるんだと思うんです。実データが使われていない、このことに対する問題点を政府としてはしっかりと、環境省としては確認する必要があるかと思いますが、いかがでありましょうか。
○神ノ田政府参考人
お答えいたします。 繰り返しになりますけれども、UNSCEARの報告書では包括的な評価がなされておりまして、今御指摘されたような大気中の放射性核種濃度のみならず、実際の食生活と行動についてのより包括的な知見に基づいて被曝線量を推定しているということです。
また、甲状腺がんの発生状況、チョルノービリでは数年後に急激に増えております。そういった発生の動向等も踏まえて総合的な評価をした結果の報告書だというふうに受け止めてございます。
○近藤(昭)委員
ありがとうございました。
今日のところは、これで質問を終了したいと思います。ありがとうございます。