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第211回国会 衆議院 憲法審査会 第3号 令和5年3月16日

○近藤(昭)委員
 立憲民主党の近藤昭一でございます。
 私は、日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法と、改正法の附則四条について発言をしたいと思います。
 一昨年、二〇二一年、公職選挙法にそろえるべく、七項目について国民投票法が改正されました。その際、我が党の修正提案によって、施行後三年をめどに、有料広告制限、資金規制、インターネット規制などの検討と、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとするという附則四条が加えられたわけであります。附則四条が加えられた意味は非常に大きいものであるわけであります。
 第一に、現行の国民投票法は、有料広告規制、すなわちテレビ広告やネット広告などについての量的規制がありません。外国からの資金も含め、資金力によって世論が誘導されかねないという根本的な欠陥を持っていると思っています。
 また、第二に、附則は、附帯決議と異なり、法的な拘束力があるわけであります。三年以内にCM規制などについて議論し、結論を得て、法的な措置を取ることは、努力すればいいというものでなく、法的な義務であります。
 第三に、附則四条は、憲法上の要請であります。憲法九十六条の趣旨は、国民主権原理に基づき、主権者たる国民の意思による承認を求めたものであります。国民投票法はその手続法であり、投票環境が整備され、公平及び公正な投票が確保されることは憲法上の要請であります。
 第四に、国民投票法の抜本的改正を必要とする立法事実が存在すると思います。国民投票法制定のときと異なり、民放連は、量的自主規制はしないと明言しています。また、制定後十年以上を経て、グローバル化、ネット化、社会環境などの大きな変化があり、外国政府の干渉などのおそれもあります。現行の国民投票法では、公平及び公正な国民投票が確保されるという憲法上の要請が満たされなくなっていると思います。
 以上、附則四条の趣旨からは、根本的欠陥が是正され、公平公正が確保されない限り、憲法改正発議はできないと考えます。
 次に、現行国民投票法の根本的欠陥について具体的に述べたいと思います。
 第一に、国民投票を確実に実施することに困難を伴う人がいらっしゃるということから、更なる投票環境の向上を図るべきだと考えます。
 いわゆる三項目案にとどまらず、まず、船員が遠洋航行している場合等の洋上投票制度は、改善されてきてはいますが、なかなか投票率は上がっていない。その原因を調査し、必要な措置を講ずるべきだと考えます。
 また、現行国民投票法では、郵便等による不在者投票は要介護五に限定されていますが、要介護二や三の人でも、投票所で投票することが著しく困難な人は多数おられるわけであります。これらの方々は、国民投票ができない可能性があります。郵便投票の対象拡大は検討されていますが、不正行為の防止を図りつつ、より投票しやすい仕組みをつくるべきと考えます。
 さらに、コロナ感染が拡大する中、自宅療養などで投票所に行けない方がいらっしゃいます。隔離施設でも投票は認められてはいますが、十分には利用されていないという問題があります。
 加えて、在外選挙人名簿の投票率が低いため、二〇一九年七月の参議院選挙では、外国におられる日本人の約二%しか在外投票をされておられません。  最高裁判所は、外国に住んでいる日本人が最高裁判官の国民審査で投票できない状況について、憲法違反と判示しています。憲法改正の国民投票において在外邦人の投票機会を実質的に奪うことがないよう、投票率向上のために必要な措置を講ずるべきと考えます。
 第二に、テレビ広告に対する規制が不十分なことであります。
 国民投票においては、影響力の大きいテレビ広告等が活用されることが必須でありますが、テレビ広告には膨大な資金が必要であります。しかも、テレビ広告の時間帯枠は、大手広告代理店の寡占状態です。資金力によって著しい格差と不平等が生じることになります。投票日の十四日前からの国民投票運動のためのテレビ広告は禁止と定められていますが、それより以前は基本的に自由となっており、適切な規制が必要であります。
 第三に、インターネット広告は全く規制がないということであります。
 インターネット広告費は、既にテレビ広告費を大きく上回っており、ターゲティング広告という受け手の性格や関心に合わせた情報発信を行っていることから、その影響力はテレビより大きいと言っていいでありましょう。二〇二〇年では、インターネット広告費が二兆二千二百九十億円、テレビ広告費が一兆六千五百五十九億円でした。テレビ広告だけでなく、インターネット広告においても適切な規制を設ける必要があります。
 第四に、インターネット上での情報悪用の危険にまだ対応できていません。
 ケンブリッジ・アナリティカ事件では、同社が、イギリスのEU離脱の国民投票やアメリカ大統領の選挙において、個人情報を不正に利用してフェイクニュースなどを効果的に発信する選挙戦術に協力をし、結果に影響を与えたと言われています。
 加えて、プラットフォーム事業者のかなりの部分が、外国資本の下、海外拠点において活動している実績があり、外国の勢力によって国民投票の結果が左右されることになれば、国家の主権が揺らぎかねません。これらは、国民主権、国家の主権に関わる重大な問題であり、放置することは許されません。
 以上のとおりでありますから、憲法審査会は、憲法九十六条及び附則四条の趣旨にのっとり、現行国民投票法の重大な欠陥の是正に真摯に取り組まなくてはなりません。憲法改正手続の重大な欠陥を放置したまま改憲を発議することは絶対にあってはならないことを強く訴え、発言を終わります。

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